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査でも、「不安のない、気持ちに余裕のあるお産をしたい」と回答しており、同様の結果を示していた。さらに、中重らはマイナス因子として、医療関係者の態度やケア不足をあげていた。分娩の満足度を高めるためには、これに加えて産婦への十分なインフオームド・コンセントや産婦の主体的な取り組みを促す個別的の対応が必要であると考える。

 

10. 仮説10:(出産直後に児との接触を希望する人が多いであろう)
母子の愛着形成の促進に母親と児との早期(出産直後)接触が良い事はすでに知られている。サリーインチ19)は、テネシー州の研究(1978)を引用し、出生直後の児との接触が12時間なかった後に4時間ごと30分程度の接触であった場合、子供への虐待や親としての行動障害がおきると述べている。さらに母乳栄養の確立から考えても分娩直後に乳首に吸い付かせる(児の口に初めて含ませるものが母親の乳首である)ことが重要視されている。今回の結果から、大部分の妊婦が、出生直後の児との接触を希望しており、仮説は支持された。

 

?Z. 結論
1. 分娩環境はすでに受診している施設を選択した理由と一致していた。
病院は緊急に対応、診療所は設備の充実・評判、助産所は夫立ち会い分娩を希望していた。初産婦は評判で、経産婦は考えているお産ができる、設備の充実が選択理由であった。
2. 分娩方法は、なるべく何もしない、自然な分娩を望んでいた。
経産婦は初産婦よりも有意(p<0.01)に自然分娩を望んでいた。
3. 分娩体位の希望のない妊婦が多数(83%)を占めていた。初産婦は経産婦よりも有意(p<0.01)に分娩体位の希望をもっていなかった。
4. 分娩時の処置は現状を肯定していた。分娩監視装置の装着・内診・浣腸・剃毛が肯定され、会陰切開はどちらともいえない、分娩促進はやや否定的であった。
5. 分娩期の過ごし方は拘束や制限をしないことを強く希望していた。
6. 妊婦は分娩時、家族参加のニーズが高く、75%が希望していた。夫の参加を希望する妊婦が74%であった。
7. 医療関係者へのニーズはあり、施設別では病院と診療所、学歴別では短・大卒が、初・経産別では初産婦がそれぞれニーズは高い(p<0.01)。しかし、方針や処置については医師や助産婦にまかせたいとして、自分の希望を伝えず「おまかせ」の現状である。
8. 分娩経験の有無によるニーズの違いは、
?@分娩環境では経産婦は過去の経験から自分の希望に一致する具体的な施設・設備を希望していた。
?A経産婦は過去に受けた処置を肯定していた。また、医療関係者へのおまかせは初・経産婦ともにあるが、経産婦は初産婦より有意(P<0.01)に希望を申し出ていた。
9. 妊婦は満是のいく出産、特に不安を抱かない、気持ちに余裕のあるお産を望み、中でも初産婦は経産婦よりも有意(P<0.01)に強く望んでいた。
10. 出産直後に児との接触を希望する妊婦が81%と多数を占めていた。

 

以上から仮説1から10のうち、8以外は全て支持された。8は分娩の経験が具体的な希望になってはいたが、過去の経験を肯定するという、仮説を否定する結果であった。

 

 

 

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